入れ歯医は絶滅危惧種?
昨年、入れ歯の講習会に出たときの話しです。講師の先生は入れ歯の権威で、世界で活躍されている数少ない日本の先生でした。
先生曰く、総入れ歯が2~3万円(患者負担は高齢者の場合1割負担で2~3千円)という安価で入れられるのは世界広しといえども日本だけで、君たちが保険で入れ歯を作っているのは、ボランティア活動とも言える行為である。と
数年前、インプラントが全盛期であったころ、歯科の講習会は8割以上がインプラントの講習会で、入れ歯の講習会など1年間で全国で10件ほどしかない時もありました。将来的には歯がない所にはインプラントが入り入れ歯などほとんど必要なくなるといわれた頃で若い先生を中心に大多数の先生が入れ歯をやめてインプラントに走りました。
その結果、まず起きたのは入れ歯を扱う技工所が激減したことです。技工所にしてみれば、入れ歯を扱う歯科医院が減り、需要が減ったのと、保険の白い前歯2本を作るのと総入れ歯を作るのと料金はほぼ同じで、手間暇は、数倍総入れ歯の方がかかるので、技工所の経営から見れば入れ歯をやらないほうが経営効率の点からは圧倒的に有利なのです。
歯科医院にしても、インプラントに走っていた数年のブランクは入れ歯の治療にとって結構な痛手です。
入れ歯の治療は、大学の教科書そのまま作ってもまず患者さんはOKを出してくれません。作った入れ歯が患者さんに不評だと、まず患者さんにどこが悪いのかじっくり話を聞き、本を読んで何故だろうと考え、講習会に出て講師の先生に質問し、試行錯誤しながら自分なりのノウハウを身に着けてゆく要素が特に強い分野なのです。私の場合なんとなくわかり始めたのが10年位経ってからでした。
高齢化社会を迎えるにあたって、手間暇に見合わない保険の入れ歯の金額と、少ない講習会と、ノウハウを持った技工所がかなり減ってしまった現状で、若い歯科医の先生がモチベーションを維持しながら入れ歯の勉強を続けるのは、かなり厳しいものがあると思われます。
と、なると入れ歯医はやはり絶滅危惧種なのでしょうか?
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